よいこのための「シュレジンガーの猫」
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あるところに、シュレジンガーという発明家のおじいさんがおりました。
あるとき、おじいさんは完全に中身を密封する小さな箱を発明しました。
その箱は、音、空気、赤外線、はたまたX線やニュートリノ粒子すら通さない。
フタを閉めてしまうと、中が全く分からないというものでした。

そんなある日。間違って愛猫が箱に入って、フタが閉まるところを見てしまいました。
その箱は作りかけで、一度閉じると二度と開かないように出来ていたのでした。
おじいさんは悲嘆にくれましたが、中の様子は全く分かりません。
おじいさんは、ただ号泣しました。一日、二日、三日...
一週間の間、ずっと泣き続けました。

一週間も小さな箱に閉じ込められていては猫はもう死んでいる。
おじいさんはそう思いはじめたとき、ふとひらめきました。

中の様子が全く分からないってことは、
中で猫が死んでいるということも分からないじゃないか。
中で猫が生きている可能性だってあるのだ。

そのときから中の猫は、
半分死んでいて、半分生きている、不思議な猫になったのでした。

おじいさんは猫の入った箱を、前と変わらず声をかけ、撫でて
愛し続けました。もちろん、中には聞こえません。

そのうち、おじいさんは歳をとって死んでしまいました。
中身が分からない開かない箱は、倉庫にしまわれました。

それでも中の猫は、半分生き続けました。

それから、幾年も年月が流れました。
もうおじいさんのことを知っている人も、もちろん猫のことを知っている人もいません。

それでも、持ち主が何度も変わった倉庫の片隅で、
猫は半分生きて、半分死んでいました。
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*** おわり ***

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by sayous | 2005-05-18 02:01 | UO(その他)
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